イギリスのフードデリバリー事情:急成長する市場と人気メニュー

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、世界中で大きな注目を集めたフードデリバリー。中でもイギリスでは、都市部を中心に急速に普及し、利用者数や売上も右肩上がりの成長を見せています。本記事では、イギリスのフードデリバリー市場の拡大と、人気のサービスやメニュー、そして利用者の嗜好の変化について解説します。

フードデリバリー市場の急成長

イギリスのフードデリバリー市場はここ数年で大きく成長し、特に2020年以降のパンデミック時にはさらにその勢いを増しました。ロックダウンや外出制限が実施されたことで、外食の代替手段としてデリバリーが利用され、オンライン注文の需要が一気に拡大したのです。

ある統計によれば、2017年時点でイギリス国内のフードデリバリー市場の売上は約8億5,400万ポンドでしたが、2019年には11億4,700万ポンドに増加し、2024年には18億ポンドを超えると予測されています。また、同じく2017年には650万人だった利用者数も、2024年には1,300万人を突破する見込みです。このように、フードデリバリーはイギリスの食文化にとって不可欠な要素となりつつあります。

デリバリー普及の背景

イギリスのフードデリバリー市場がここまで拡大した背景には、利便性の高さと都市生活者のニーズの変化があります。忙しい日常の中で、簡単に自宅で美味しい料理が楽しめるデリバリーサービスは、特に若年層を中心に支持を得ています。また、デリバリーアプリが充実したことや、スマートフォンの普及もこの成長を後押ししました。

さらに、デリバリーに特化した「ダークキッチン」と呼ばれる調理施設の登場も、フードデリバリー業界の進化に大きな影響を与えています。ダークキッチンは飲食スペースを持たず、オンライン注文のみで運営するため、初期費用や運営コストを抑えることが可能です。デリバルー(Deliveroo)やウーバーイーツ(Uber Eats)といった企業は、このダークキッチンを積極的に活用し、さまざまな業態の料理を提供することで顧客の幅広いニーズに応えています。

主なフードデリバリーサービスの特徴

イギリスのフードデリバリー市場には、複数の大手プレーヤーが存在し、それぞれが異なる特徴と戦略でユーザーを惹きつけています。代表的な3社について見ていきましょう。

1. ジャストイート(Just Eat)

ジャストイートは、イギリス国内で最も歴史があるフードデリバリー企業で、広範なエリアをカバーしていることが特徴です。ジャストイートは、都市部だけでなく地方都市にも対応しており、利用者層も幅広く、高齢者から若年層までが利用しています。

地方都市では主に中華料理、インド料理、ピザといった家庭的なメニューが人気で、幅広い年齢層に対応したサービス展開が行われています。多くのレストランと提携しているため、注文の選択肢も多く、特に郊外や地方の利用者からの支持を集めています。

2. デリバルー(Deliveroo)

デリバルーは、都市部の若年層をターゲットに、トレンド性の高い料理や中高級レストランのメニューを提供することで人気を博しています。同社は、他のデリバリーサービスにはないラインナップを強みに、消費者に豊富なメニューを提案しているのが特徴です。

また、デリバルーは、レストランと協力して「イノベーションファンド」などの取り組みも行っており、提携先レストランのブランド育成を支援する姿勢が評価されています。このほか、ダークキッチンの導入も進めており、幅広いメニューラインナップとスピーディな配送で、多様なニーズに対応しています。

3. ウーバーイーツ(Uber Eats)

ウーバーイーツは、配車サービスのウーバー(Uber)が展開するデリバリー事業で、都市部を中心に支持されています。ウーバーの利用者基盤を活かし、イギリス国内でもロンドンをはじめとする大都市で利用者を増やしています。

ウーバーイーツは利便性の高さや多様なメニューラインナップで評価されており、シンプルなインターフェースと直感的な操作性も魅力です。また、約20,000店以上のレストランと提携し、ユーザーに幅広い選択肢を提供しています。

人気メニューと利用者の嗜好

イギリスのフードデリバリー市場で人気のメニューは、ピザ、ハンバーガー、サラダ、フィッシュ&チップスなどが定番です。特にピザとハンバーガーは、男女問わずに多く注文されるメニューとして知られています。以下は、イギリスでの人気メニューのランキングです。

  1. ピザ
    フードデリバリーの定番とも言えるピザは、気軽に楽しめるメニューとして最も人気があります。ピザは、イギリスにおいてもその人気が衰えることなく、多くの消費者に愛されています。
  2. ハンバーガー
    ハンバーガーも、デリバリーの人気メニューの一つです。肉厚なパティと新鮮な野菜が特徴のハンバーガーは、忙しい日常の中で手軽に美味しく楽しめるメニューとして、幅広い年代の消費者に親しまれています。
  3. サラダ
    健康志向の高まりとともに、サラダも人気が上昇しています。特に、ヘルシー志向の若年層や健康に配慮したい層から支持されています。
  4. フィッシュ&チップス
    イギリスの代表的な料理であるフィッシュ&チップスは、デリバリーでも根強い人気を誇ります。新鮮な白身魚とホクホクのポテトが特徴で、家庭でも楽しめる安心感のあるメニューです。
  5. パスタとカレー
    イタリアンやインド料理も、デリバリーで定番の選択肢です。特にパスタは家ではなかなか作れない本格的な味を楽しみたいという消費者に支持されています。カレーも、スパイスの効いた風味豊かな料理が好まれています。

フードデリバリー利用の動機

フードデリバリーを利用する消費者の動機には、「自宅でレストラン品質の料理を楽しめる」、「自分へのご褒美として贅沢な時間を過ごしたい」という心理が大きく影響しています。特に若年層を中心に、自分の時間を楽しみながら食事を満喫したいというニーズが増えており、フードデリバリーはその理想を叶える手段として広く受け入れられています。

また、注文の頻度も多様化しており、週に1回以上デリバリーを利用する人も増えています。イギリスでは、デリバリーは「手軽に利用できる外食」として位置づけられ、忙しい日々のリフレッシュや、特別な時間を過ごす際のツールとしても利用されています。

今後の展望とダークキッチンの台頭

フードデリバリーの利便性が広く浸透し、オンライン注文による食事サービスは中長期的に定着する可能性が高いと考えられます。コロナ禍により一時的に利用が増えたというよりも、利便性と多様性が評価され、日常生活の一部として認識されているためです。

また、ダークキッチンの拡大もこの流れを後押ししています。ダークキッチンは、飲食店が実店舗を持たずにデリバリーに特化した運営を可能にし、低コストかつ迅速に消費者のもとに料理を届ける新しい業態です。これにより、店舗維持費や人件費の削減が可能になり、多様なメニューの提供も実現しています。

イギリスのフードデリバリー市場は、今後もさらなる進化を遂げ、ダークキッチンや新たなテクノロジーの導入によって、消費者にとって一層魅力的なものとなるでしょう。